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体横断面形状を精度良く近似し、各横断面の両舷より離散的な自由渦を流れに沿って放出することによって、船体まわりの流場のモデル化を行っている。船体に作用する流体力は、船体の各横断面における運動量変化より求めことができる。また、自由渦の剥離位置は各横断面における船体表面において圧力が最小となる点に仮定されている。細長体近似を用いた場合、船体近傍の流れは2次元的に取り扱われるため、船体前後端部における3次元影響を考慮することが困難である。従って、本計算法においては、船体前端部における流体力の計算において、横力については船体と長さおよび体積が等しい回転楕円体の厳密解に基づく3次元修正ならびに2次元平板翼の渦度分布を参考にした修正の平均値を適用し、船体後端部における流体力の計算については2次元平板翼の渦度分布を参考にして渦強さの修正を行っている。
図3.3.7には、本計算法によってSR221A、SR221B、SR221C船型を対象として、船体流体力を推定した結果を示している。斜航角βが小さい範囲においてはSR221B船型の方がSR221A船型よりも大きな横力が作用しているが、βが大きくなるにつれてその傾向は逆転している。一方モーメントについては、斜航角βの小さい範囲においてはSR221A船型の方が大きな値を示しているが、この傾向もβが大きい範囲では逆になっている。SR221C船型に対する横力、モーメン日こついては、ともにSR221A,SR221B船型のほぼ中間の値として推定されている。
(5)流体力計算法(その5)
この流体力計算法は船体横断面内を横切る流れ(Cross flow)を主体に取り扱う万法である。船体の横断面形状はフレームライン上に連続的に分布させた束縛渦によって表し、横断面積の船長方向の変化に基づく3次元影響を表すために、横断面積の変化に対応する吹き出しを船体中心線上に配置している。フレームライン上に分布させた束縛渦の強さは物体表面条件を満足するように決定する。また、船体から剥離する滑層は、船体横断面から流出する離散的な自由渦を用いて表しており、剥離位置は各横断面の表面流速分布に基づいてビルジ部に仮定している。剥離する自由渦の発生位置は、仮定した剥離位置から深さ方向に吃水のS’倍離れた位置としている。以上のように船体まわりの流場をモデル化した時、船体に作用する流体力は各横断面まわりの流体の連動量変化を見積もることにより求めることができるが、この流体力はいわゆる船体に極めて近傍の領域についてのみ考えた近似解であるため、その船長方向の分布らなびに回頭モーメントの推定精度に影響を及ぼすことが考えられる。従って、本計算法においては自由渦を考慮しない場合の船体の各横断面の流体力成分について、上記の方法で求められるCross flowに基づく成分とLagallyの定理に基づく船体から遠く離れた領域まで考慮して求めた流体力の平均値を採用することにより、推定精度の向上を図っている。
図3.3.8にはSR221A、SR221B、SR221C船型の3船型を対象として、斜航時の流体力を推定した結果を示している。横力、回頭モーメントともに斜航角βが小さな範囲においては模型試験結果と比較的良く一致しているが、斜航角βの値が大きくなるにつれ、横力の推定結果は模型試験結果よりも大きくなっており、モーメントについては模型試験結果より小さくなっている。しかしながら、3船型の船型の違いに基づく流体力の変化の定性的な傾向については一致する結果となっている。
(6)流体力計算法(その6)
この流体力計算法は、細長体理論に基づく推定法である。船体横断面形状を高次の項まで考慮した写像関数を用いて近似して表し、船体から剥離する渦層は各横断面の両舷より流出する離散的な自由渦でモデル化している。自由渦が剥離する位置は各横断面内の圧力が最小となる点に仮定されており、自由渦は船体まわりの流れに沿って自由に移動するものとして取り扱っている。また、流体力の推定精度の

 

 

 

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